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上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)

上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)

少し前に医療過誤で有名になった病気です。腹部大動脈と上腸間膜動脈(SMA)の間で十二指腸が挟まれて狭窄し、それより口側の十二指腸や胃に通過障害が生じて拡張するという病気です。

十二指腸の水平脚という部分は腹部大動脈とSMAの間を通過します。そのすきまが狭い人は十二指腸が圧迫され、この病気を発症する可能性があります。

若年者に多く、特に急激に痩せて内臓脂肪が減ったり、急に身長が伸びて腹部大動脈とSMAのすきまが狭くなった人に起こりやすいと言われています。症状としては、食後の腹痛や嘔吐などがありますが、通常はただちに生命をおびやかす病気ではありません。

左(正常)と比べ、右(SMA症候群)では腹部大動脈(Aorta)とSMAの間が狭く、十二指腸(Duodenum)が圧迫されています(下記①より引用)。

診断にはCTが有用です。画像所見はシンプルですが、この病気を診断することには躊躇することもあります。正常な人でも腹部大動脈とSMAの間で十二指腸が狭くなって見える人は多いです。そのような人を全員SMA症候群疑いと診断すると、偽陽性(病気ではないのに病気と診断されてしまうこと)が増えてしまいます。よほどの十二指腸の強い狭窄と口側の胃・十二指腸の拡張があり、症状もSMA症候群として合致する場合のみ、SMA症候群疑いと診断できます。

SMA症候群のCT画像です。十二指腸(赤矢印)はSMAと腹部大動脈の間で圧迫され、口側の胃・十二指腸が拡張しています(下記②より引用)。


腹痛の原因は多岐に渡り、CTでの診断は専門的な知識が必要です。

過去に腹痛を訴えCTを撮影して、異常なしと診断されたにも関わらず、症状が改善しない人もいらっしゃるかもしれません。一度、画像のセカンドオピニオンを受けることをお勧めします。


①Asthik B, et al.
Superior mesenteric artery syndrome: CT findings. BMJ Case Rep. 2016; 2016: bcr2016215885.
②Jeffrey KKF, et al. Imaging Findings and Clinical Features of Abdominal Vascular Compression Syndromes. Am J Roentgenol. 2014; 203: 29–36. 

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