「〜癌疑い」の報告書が主治医に読まれず、患者さんの癌が放置され、癌が進行した状態で発見される医療過誤が問題となっています。
主治医がCTで癌などの重大な病気を見落として患者さんを帰宅させてしまっても、放射線科医が作成した診断レポートでそれが指摘されていれば、患者さんに再度連絡して治療介入が可能です。
ただし、主治医が癌を見落とし、かつ放射線科医が作成した「〇〇癌が疑われます」というレポートが読まれないケースも少ないながらあります。その場合はもちろん患者さんにも「癌疑い」の情報は伝えられず、癌が進行してしまい、すでに手遅れの状態で発見されることがあります。そのような医療過誤はしばしばニュースで報道されます。
「〜癌疑い」の報告書が主治医に読まれない理由として、主治医の専門領域外の癌が偶然写っていた場合や、報告書作成前に患者さんの診察が終了してしまった場合などが挙げられます。
放射線科医のレポートが主治医に読まれずに放置される理由は大きく二つあります。
一つ目は、主治医が自分で画像診断をする場合です。自分の専門領域の病気を診断できる主治医は、放射線科医のレポートを読まないことも多いです。ただし、CTやMRIでは主治医の専門領域以外の臓器や疾患も一緒に撮影されることが多いです。呼吸器内科の医師が肺のCT画像を診断できても、肺のすぐ下にある肝臓や腎臓などの上腹部の病気(癌など)を気付かないことは良くあります。放射線科医が主治医の専門外の病気を見つけてレポートに記載しても、自分の専門領域の診断に自信のある主治医はレポートを読まずに患者さんを診察して、放射線科医が指摘した専門外の病気が放置されてしまうことがあります。
二つ目は、診断レポートが作成される前に患者さんの診察が終了し、レポートが主治医に読まれないまま放置される場合です。放射線科医は検査終了後に速やかにレポートを作成することを心がけていますが、マンパワー的にレポート作成が翌日や翌々日になることもあります。主治医が病変を気づかずに、異常なしと判断して患者さんを帰宅させても、その後に放射線科医の診断レポートを読んで見落としに気づけば、再度患者さんに連絡して治療を行うことができます。しかし、一度診察が終了してしまうと、放射線科医のレポートを読まない主治医もいます。そのような時に「〜癌疑い」の診断レポートが無視されてしまうことがあります。
この問題に対して、最近病院はいろいろな対策をとっていますが(それは別の投稿で記載予定です)、いまだに完全に防げてるとは言えない状況です。