画像診断

典型的な癌の見落としのパターン

過去のCTで見逃され、進行してしまった大腸癌

先日、進行した大腸癌のCT画像を読影しました。近くにある膀胱に浸潤し、リンパ節転移や腹膜播種も認められました。

今回初めて指摘された癌ですが、振り返ってみると過去のCTでも存在しており、その当時は見逃されていたようです。

この患者さんは変形性股関節症の手術のために3カ月前に股関節のCTが撮影されていました。

CTやMRIなどの画像検査では目的とする組織・臓器のみならず、周囲の組織・臓器も一緒に撮影されます。

3カ月前の股関節のCTでも、股関節だけでなく近傍の大腸の一部や膀胱も写り込んでおり、その時からすでに大腸癌は存在していました。

CTをオーダーした主治医は主病変である股関節の画像は確認したと思いますが、大腸までは見なかった、あるいは見ても癌に気付かなかったのだと推察されます。

そして主治医は画像診断医に読影の依頼をしておらず、大腸癌は見逃され、この3ヶ月間で癌は進行してしまいました。

ダブルチェックのされてない画像も多く存在し、しばしば大きな病気が見落とされています。

多くの病院では主治医と画像診断医の両者が画像を読影し、ダブルチェックをしています。

読影を画像診断医にもお願いするかどうかは、基本的には検査をオーダーした主治医の判断に委ねられます。主治医が自分の専門領域の読影が可能な場合は、画像診断医に読影を依頼をしないこともよくあります。

しかしながら、主治医の専門領域以外の病気が存在する場合、それが気付かれずに見逃されてしまうこともしばしばあります。経験的には、癌などの重大な病気が見逃される時はこのパターンが多いです。

画像診断医によるダブルチェックやセカンドオピニオンにより見落としの確率が大きく下がります。

このように画像診断医の目を通らずダブルチェックのされていない画像は多く存在し、今回のように大きな病気が見逃されている可能性があります。これが画像診断のセカンドオピニオンをお勧めする大きな理由の一つです。

マンパワー的に難しい部分もありますが、なるべく多くの画像に目を通すことで、患者さんや主治医のお役に立てればと考えています。

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