はじめに
脳ドックを受けたときに「古い脳梗塞があります」と指摘されると、多くの方が驚かれます。
「症状もなかったのに、いつ脳梗塞が起きたの?」
「今後はどうすればいいの?」
と、不安になるのは当然です。
実際、古い脳梗塞が見つかるのは珍しいことではありません。特に40代以降になると、無症状のまま小さな脳梗塞を経験している方は少なくありません。この記事では、古い脳梗塞の意味と対応について医師の視点から解説します。
古い脳梗塞とは?
「古い脳梗塞」とは、過去に脳の血管が一時的に詰まり、小さな梗塞が起きた痕跡を指します。
特徴は次の通りです:
・MRIで偶然見つかることが多い。
・自覚症状がなかったため「無症候性脳梗塞」と呼ばれる。
・高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病のある人に多い。
・加齢とともに頻度が増える。
つまり「過去に小さな脳梗塞を起こしたが、症状が出なかった」状態なのです。
放置して大丈夫?
古い脳梗塞そのものがすぐに命に関わるわけではありません。
しかし、放置してよいものでもありません。
理由は2つあります。
1. 将来の脳卒中リスクが高いサイン
古い梗塞があるということは「脳の血管に動脈硬化などの問題がある」ことを意味します。将来、脳梗塞や脳出血を起こすリスクは、ない人に比べて高くなります。
2. 認知症リスクとの関連
無症候性の脳梗塞が多発すると、脳の血流や神経ネットワークに影響し、将来的に認知症のリスクを上げることも知られています。
したがって「古い脳梗塞があります」は「要注意信号」として受け止める必要があります。
具体的な対応方法
1. 生活習慣の見直し
古い梗塞を新しい病気につなげないために、生活習慣の改善は非常に重要です。
・減塩食:食塩摂取量は1日6g未満が理想。
・禁煙:喫煙は血管を強く傷つけるため、最優先でやめるべき。
・適度な運動:ウォーキングや軽いジョギングを週150分程度。
・飲酒は控えめに:過度の飲酒は血圧を上げる要因。
2. 基礎疾患の管理
高血圧・糖尿病・脂質異常症がある方は、必ず治療を継続してください。
これらの病気を放置すると、再度脳梗塞を起こすリスクが一気に高まります。
3. 薬物治療が必要な場合も
状況によっては以下のような薬が検討されます。
・抗血小板薬(アスピリンなど):血液が固まりにくくなる薬。
・降圧薬:血圧を安定させる。
・脂質異常治療薬(スタチンなど):コレステロールを下げ、血管を守る。
薬を飲むかどうかは年齢・基礎疾患・リスクの程度によって異なるため、主治医とよく相談することが大切です。
セカンドオピニオンを考えるべきケース
・説明が短く「よくわからないまま帰ってきた」
・「薬を飲むべきか迷っている」
・「他の病院でもう一度確認してほしい」
こうした場合、画像診断の専門医によるセカンドオピニオンを受けるのも選択肢です。
画像を改めて確認してもらうことで、「本当に古い梗塞なのか」「追加検査が必要なのか」が明確になります。
まとめ
・古い脳梗塞は、症状がなくてもMRIで偶然見つかることがある。
・すぐに危険ではないが、将来の脳卒中や認知症のリスクを示すサイン。
・生活習慣の改善・基礎疾患の管理が最大の予防策。
・不安が残る場合は、セカンドオピニオンを受けることで安心できる。
脳ドックで「古い脳梗塞があります」と言われたときは、必要以上に恐れる必要はありません。
しかし「将来のリスクを下げるための行動を始めるきっかけ」として前向きに捉えることが大切です。