画像診断

刺身を食べた後の腹痛

40歳代男性、下腹部痛で救急外来を受診

40歳代の男性が休日に下腹部痛を訴え、救急外来を受診しました。3日前に刺身を食べたとのことです。

生食歴からはまずは感染性胃腸炎が疑われます。胃アニサキス症も鑑別となりますが、胃アニサキス症は食後数時間〜半日程度で発症することが多く、症状も上腹部痛であり、今回の症例には合致しません。

腹痛が強いこともあり、CTが撮影されました。小腸壁の浮腫(むくみ)が強く、それが原因となって腸閉塞が生じていました。腹水も認められます。なお、胃アニサキス症で認められる胃壁の肥厚はありませんでした。

生食歴も考慮し、小腸アニサキス症を強く疑う所見です。通常は手術は行わずに投薬などで保存的に加療する疾患です。

しかしながら、休日には画像診断医は出勤しておらず、後期研修中の若い外科医がCT所見を判断しなければいけない状況で、小腸アニサキス症との診断には至らなかったようです。

その後、腹痛が増悪し、腹膜刺激兆候も出現したことから、担当医は腸管虚血も否定できないと判断し、休日に緊急手術を行う方針となりました。小腸部分切除術後が行われ、切除標本からアニサキス虫体が確認され、最終的に小腸アニサキス症と診断されました。

アニサキス症は胃だけでなく、小腸でも発症することがあります

アニサキス症は胃での発症が有名ですが、虫体が胃を通過して、小腸で発症することも珍しくありません。

小腸アニサキス症は、小腸壁の強い浮腫と口側小腸の拡張、腹水が特徴的な画像所見で、これに加えて生食歴の情報があれば診断は可能と考えます。

小腸壁に浮腫状肥厚があり(→)、口側の腸管は拡張しています(▶︎) 文献1より引用

 

今回のケースでも早い段階で診断ができていれば、不要な手術は避けられたかもしれません。

最近アニサキス症は増加しているようであり、覚えておきたい画像所見です。

 

1. Shibata E, et al. CT findings of gastric and intestinal anisakiasis. Abdom Imaging.  2014; 39: 257–261.

 

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