画像診断

卵巣癌?

60歳代の女性、腹痛で受診し、卵巣に腫瘤を指摘

先日経験した症例です。

60歳代の女性が腹痛を訴え病院を受診しました。

CTが撮影され、両側の卵巣や卵管に腫瘤があり、周囲の組織を破壊するように浸潤していました。後日に撮影されたMRIでも同様の所見でした。

卵巣癌、卵管癌や転移性腫瘍など悪性病変が疑われました。

ただし、卵巣癌や卵管癌で上昇しやすい腫瘍マーカーは陰性でした。また、転移性腫瘍の可能性も考え全身を調べましたが、原発巣(転移の元となる病変)も見つかりませんでした。

なかなか診断がつかずに、最終的に生検をして組織を一部採取しました。その結果、放線菌症と診断されました。

放線菌症は悪性腫瘍と似た画像所見を示すことがあります

放線菌症は放線菌属の細菌による慢性の感染症で、組織を破壊しやすいという特徴があります。

参考に放線菌症の造影MRIの画像を提示します。この画像では病変は浸潤傾向を示す白い(造影される)腫瘤として同定されます。

放線菌症

放線菌症


このように画像上は悪性腫瘍に類似しており、しばしば鑑別が困難です。全身のあらゆる部位で起こり得ります。今回のように骨盤部で発症する際には子宮内避妊器具(IUD)が原因となる場合が多いですが、この患者さんはIUDの装着はありませんでした。

放線菌症は画像診断の専門医試験でも良く出題される良く知られた病気ですが、実際に見る機会はそれほどありません。

周囲への浸潤傾向が強い病変を見たら、悪性腫瘍だけでなく、放線菌症も鑑別に挙げるべきということを再確信する良い機会となりました。

引用画像 Ying H, et al. A Case Report of Pelvic Actinomycosis and a Literature Review. Am J Case Rep. 2020; 21: e922601.

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