画像診断

虐待の画像診断

虐待を疑う際には全身骨のレントゲン、頭部CTやMRIで骨折や頭蓋内出血を評価します

医師は小児の診察において虐待の可能性があると感じた時は児童相談所などの公的機関への連絡することが法律で義務付けられています。

虐待の有無を判断することはとても大切ですが、その際にも画像診断は役立ちます。

具体的にはレントゲンや頭部のCT・MRIで骨折や頭蓋内出血の有無を評価します。

虐待が疑われた時には全身の骨のレントゲンを撮影します。虐待で認められやすい(特異度の高い)骨折としては、骨幹端損傷、肋骨骨折(特に背側)、肩甲骨骨折、棘突起骨折、胸骨骨折などが挙げられます。

骨幹端損傷は四肢の長管骨で多く、小児が揺さぶられることにより成長過程にある脆弱な骨幹端が損傷されることが原因と考えられています。

肋骨骨折や肩甲骨骨折は打撲などの胸背部への直接外力、胸部の揺さぶりや上肢の牽引などによって生じると考えられています。

頭部のCTやMRIも頭蓋内出血や脳損傷など頭部への外傷を評価する上で重要です。硬膜下血腫、くも膜下出血、硬膜外出血、脳挫傷、びまん性軸索損傷、頭蓋骨骨折が起こり得ます。これらは打撲などの直接外力や揺さぶりによって生じます。

いずれにしても虐待による外傷性変化には「揺さぶり」が大きく起因することが特徴です。

小児の骨レントゲンの評価は慣れないと難しく、特に虐待を疑う際には慎重に評価する必要があります

CTやMRIでの頭蓋内出血や脳損傷の評価はそれほど難しくありません。ただし、レントゲンによる小児の骨折の有無を判断することは見慣れないととても難しいです。

骨折を見逃すことは虐待を見逃すことになりかねないので、見落としがないように注意して読影します。

その一方で、骨折がないにも関わらず骨折ありと誤診してしまうことも問題です。その場合、虐待が存在しないのに虐待ありと認定されてしまう可能性があり、冤罪に繋がります。

コロナ禍では在宅の時間が長くなり、虐待が増えたとの報告があります。これほど読影していて嫌な気分になる画像はありませんが、正しい判断ができるように努めたいと思っています。

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