はじめに
人間ドックや頭痛の精査などで脳のMRAを受けたとき、「脳動脈瘤の可能性があります」と言われると、大きなショックを受ける方は少なくありません。
脳動脈瘤は破裂すると命に関わる「くも膜下出血」の原因になるため、その言葉を聞くだけで強い不安を感じるのは当然です。
しかし実際には、MRAで「動脈瘤のように見える膨らみ」の多くは、正常な血管の形のバリエーション(漏斗状拡張)であることもあります。
この記事では、脳動脈瘤と漏斗状拡張の違いについて、医師の立場からわかりやすく解説します。
脳動脈瘤とは?
・脳の動脈がコブのように膨らんだ状態を指します。
・大きさや形、部位によっては破裂してくも膜下出血を起こすリスクがあります。
・見つかった場合は経過観察を行い、リスクが高いと判断されれば治療(クリッピング術やコイル塞栓術)が検討されます。
つまり脳動脈瘤は、将来的に破裂する可能性があるため注意が必要な病変です。
漏斗状拡張とは?
血管の分岐部が漏斗のように広がって見える形態で、生まれつきの正常変異です。
・「拡張」と名前がついていますが、病気ではなく正常構造です。
・出血リスクはなく、経過観察も不要です。
脳動脈瘤と間違われやすいものの、本質的には「全く問題のない形の違い」なのです。

MRAでの見分け方
MRAでは、MIP(最大値投影)と呼ばれる立体的に合成した画像がよく使われます。
このMIP画像は血管の全体像を把握するのに便利ですが、問題のない「漏斗状拡張」を「動脈瘤」に見間違えることがあります。
鑑別のポイント
・動脈瘤:膨らみの先に血管が出ていない、丸いコブのような形。
・漏斗状拡張:膨らみの先端から血管が分岐している。
そのため、MIPだけでなくMRAの元画像(スライス画像)を丁寧に確認することが大切です。
追加検査でも区別できないことがある
「本当に動脈瘤なのか、漏斗状拡張なのか」迷った場合、CTA(CT血管造影)や脳血管造影といった追加検査を行うこともあります。
しかし、これらの検査でも最終的に鑑別が難しい場合があるのが現実です。
そのため、経過をみながら判断することも少なくありません。
どんなときにセカンドオピニオンが役立つか?
・MRAで「動脈瘤の疑い」と言われたが、本当にそうなのか不安なとき
・「経過観察で大丈夫」と言われたが納得できないとき
・「治療が必要かもしれない」と言われ、他の専門医の意見も聞いて判断したいとき
漏斗状拡張と動脈瘤の区別は、専門医でも迷うケースがあります。
だからこそ、画像診断の専門医によるセカンドオピニオンは非常に有益です。
まとめ
・脳動脈瘤はコブのような膨らみで破裂リスクがあり、経過観察や治療が必要になることがある。
・漏斗状拡張は血管分岐部の形の違いであり、病気ではなく経過観察も不要。
・MRAでは両者を間違える場合もあり、CTAや脳血管造影をしても最終的に判別できないことがある。
・不安が強い場合は、セカンドオピニオンを受けて安心と納得を得ることが大切。