30歳代男性、右側腹部痛で受診、腸炎との診断
30歳代の男性が右側腹部痛を主訴に休日に救急病院を受診し、造影CTが撮影されました。上行結腸にむくみがあり、感染性腸炎と診断されました。抗生物質を処方され、自宅で経過を見る方針となりました。
週明けに出勤した画像診断医が画像を確認しました。確かに上行結腸にむくみがあり、感染性腸炎として矛盾しません。しかし、よく画像を観察すると、むくんでる腸の奥側(肛門側)が部分的に造影剤で染まっていました。小さな病変ですが、大腸癌を疑う所見です。
大腸癌によって腸炎が生じると、癌が隠れてしまうことがあります
大腸癌があると、その手前(口側)の大腸には閉塞性腸炎が生じることがあり、腸がむくみます。小さな大腸癌でも閉塞性腸炎を起こすことがあります。
この癌による腸のむくみ(閉塞性腸炎)は、CT上は感染性腸炎や虚血性腸炎と区別困難な場合も多く、しばしば誤診されます。
正確な診断には癌を発見することが大切です。今回の症例では幸いにもCTで癌を疑うことができました。ただし、大腸癌が小さく、その手前の腸のむくみが強いと、CTで癌を発見が難しい場合も多々あり、最終的には内視鏡で癌が発見されることも多いです。
腸炎と診断されている症例には、大腸癌が隠れている可能性があります
大腸癌は今回の症例のように比較的若年でも発症します。感染性腸炎と診断されてもなかなか治らない場合には、若い人でも癌が隠れている可能性もあります。そのような場合は造影CTや内視鏡で癌を念頭に置いた更なる詳しい検査が必要と考えます。